東京高等裁判所 昭和31年(う)322号 判決
被告人 諸橋寅吉
〔抄 録〕
よつて考察するのに原判決挙示の証拠によれば、被告人が昭和二十八年七月二十二日浦和地方裁判所において詐欺罪により懲役十月(但し三年間執行猶予)に処せられ(同年八月六日判決確定)、その刑の執行猶予期間中更に原判示犯行に及んだものであること明瞭であるところ原判決は証拠により右事実を認定した上、被告人を懲役一年六月に処すると同時に、刑法第二十五条第二項本文第二十五条の二第一項後段を適用して五年間その刑の執行を猶予し、右期間被告人を保護観察に付する旨の判決言渡をしたものであること、検察官所論のとおりである。然しながら刑の猶予期間中罪を犯した者に対し更に刑の執行猶予の言渡をすることができるのは、その罪につき一年以下の懲役又は禁錮の言渡をし、情状特に憫諒すべきものがあるときでなければならないことは、刑法第二十五条第二項本文の明定するところであるから、原判決が敍上の如く被告人を懲役一年六月に処しながらその刑の執行猶予の言渡をしたのは、同法条の適用を誤つたものでありその誤が判決に影響を及ぼすことは明らかである。されば検察官の論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。
(三宅 河原 遠藤)